
「イタリアには世界遺産を守る能力がない。ポンペイはこの先、毎年よく来てくれる日本人にも面倒をみてもらわないといけない」。イタリアの非営利組織「文化遺産監視機構」南部地域担当の建築家アントニオ・イルランドさん(55)は真顔でそう言った。
ポンペイ遺跡は紀元79年、ベズビオ火山(現標高1281メートル)の大噴火による火砕流で埋まった古代都市で、18~19世紀の発掘でよみがえった。広さは東京ドーム14個分の66ヘクタールある。
ポンペイは最盛期、ローマ帝国の貴族など推定2万5000人が暮らし、ギリシャ時代のアポロ神殿や円形劇場、バーやレストランも多数あった。これらが瞬く間に火砕流にのみ込まれたことで、当時のままの街並みに加えて、多くの壁画や彫像、さらに人や犬の亡きがらまでが火山灰の中に空洞として残った。
ポンペイ遺跡で10年11月6日に崩落し粉々になった建造物「戦士の学校」=同月撮影、イタリアの非営利組織「文化遺産監視機構」提供 そんな世界遺産で昨年11月、「戦士の学校」と呼ばれる建物が崩落し、爆撃を受けたかのように粉々になった。「この建物は大丈夫だと見ていたからショックは大きかった。ポンペイ遺跡の約1500の建物の約8割がいつ壊れてもおかしくない状態だ」と、イルランドさんは言う。
「戦士の学校」の崩落は当初、壁や柱への浸水が原因と見られていた。だが、この地域は地震の多発地帯でもあり、調査に当たる構造設計技師ニコラ・アウジェンティ氏は「浸水だけではなく、地盤が弱っていた可能性もある」と述べ、結論は出ていない。
崩落から1年を経て原因を特定できないのも問題だが、それ以前にポンペイには修復技師がほとんどいない。20世紀初めには「85人」との記録があるが、今や5人に過ぎない。
しかも、予算が有効に使われない「いいかげんさ」もある。これは今に始まったことではない。ポンペイがあるカンパニア州の調査委員会は「2010年までに、五つの建造物に対し欧州連合(EU)の支援金も含め約3900万ユーロ(約40億1700万円)が使われたが、効果を上げたプロジェクトはなかった」との報告書をまとめている。
ベルルスコーニ前政権は08年に「ポンペイ非常事態宣言」を発令、遺跡保護の管轄を文化省から災害担当の防災庁に移した。家々の内壁を飾る原色やパステルカラーのフレスコ画が年平均150平方メートルもはがれ、警備の手薄さから発掘品の盗難やゴミ投棄が目立ち始めたためだ。だが、「遺跡の専門家」でない防災庁が指揮したことで、劣化はさらに進んだ。
ポンペイを管轄する地元検察のディエゴ・マルモ局長によると、当局は「戦士の学校」崩壊を重く見て、管理者の責任を追及する異例の捜査に乗り出している。現在、防災庁の担当官ら9人を職務不履行と過失損害の容疑で捜査中だ。
また、円形劇場の修復(費用700万ユーロ)をめぐる不明朗支出などで担当官ら2人を職権乱用、公的物品の納入不正容疑で調べている。修復予算の一部が工事と関係のない大量の物品購入に充てられるなど、不可解なカネの出入りが確認されたという。
マルモ局長は「遺跡の保護は細心の注意を払っても難しいのに、かなりずさんに管理されており、公金の使途も不明な点が多い」と話す。検察は来年早々にも起訴に踏み切る構えだ。
他にも遺跡の門扉代20万ユーロ、野良犬排除策11万ユーロなど、遺跡保護の核心ではない支出も目立つ。先の非営利組織のイルランドさんは「08年以降、崩落予防策はほとんどなされなかった」と指摘した。
◇来春からの修復、EU緊急支援へ
こうした状況の中、ヨハネス・ハーン欧州委員(地域政策担当)が先月初め、ポンペイ遺跡を訪れ、来春に始まるポンペイとその周辺遺跡の修復5カ年計画にEUが緊急支援として1億500万ユーロを投じると公表した。人類共有の貴重な遺産の保護を「イタリアだけに委ねられない」ということだ。
だが、効率の悪い管理や資金の不明朗な使途が続けば、修復はままならず、新たな崩落も防ぎようがない。「いまの体制のままでうまくいくのか」。専門家らの不安の声は収まらない。
4 commenti:
Gentile signorina Puntorosso, è tutto chiaro nell'articolo, però la cosa che non condivido è la parte in cui si parla di Zenone. Ma poi, chi è sto Zenone?
come chi è? Zenone Zenone Zenone!!!!
:)))
scusasse l'ignoranza nipponica.... ma che vor dì.....
ehhhhhhhhhhh, nun se po dì!
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